仕事が趣味でナゼ悪い

【趣味に関するアンケート調査 男女別ベスト3】

男性

第1位:  スポーツ(30.0%)

第2位:  読書(15.4%)

第3位:  インターネット(15.0%)

「趣味無し」  2.1%  

女性

第1位:  読書(21.7%)

第2位:  旅行(16.3%)

第3位:  音楽鑑賞/料理(14.6%)

「趣味無し」  2.5%  

出典:(株)マーシュ「趣味に関するアンケート調査」20~50代男女480名回答 2014年10月

 

 

問う人 「お見合い3連敗のぶざまな男は僕です。恥を忍んでやってまいりました」

知る人 「そう聞いていたから、どんな男性かと待ち構えていたのだが、君の方から断ったんじゃないのかね。とても3タテ食らうようには見えない」

問う人 「釣り書きと写真の段階ではみんなOKだったんです。ところが、会って話していて、趣味の話題になるとダメなんですね。僕には理解できません」

知る人 「仕事が趣味だと君が言うと、相手の態度はどう変わったのかな」

問う人 「態度が急変、ってことはなかったですけど、会話に間が多くなって、よそよそしい話を少しして終わりです」

知る人 「彼女たちの趣味は何だったのかな」

問う人 「1人が料理、2人が読書でした」

知る人 「それを聞いて、君はどう感じたかね」

問う人 「ああそうですか、ぐらいですね。3人とも、テキトーに答えてるみたいで、そこから話を広げようという感じじゃなかったです」

知る人 「お見合いは君自身の意志、それとも親か誰かのすすめ、どちらかな」

問う人 「言い出したのは母ですけど、僕ももう30過ぎたし、そろそろだなって思ってたんで、けっこう乗り気でした」

知る人 「女性たちも同じぐらいの年齢かな」

問う人 「29歳が1人で、あとは2人とも僕と同じでした」

知る人 「第4戦に挑む気はあるかい」

問う人 「ないです。気持ちの整理がつくまでは」

知る人 「君の周囲、同僚でも学友でもご近所さんでも何でもいいが、君と同じ趣味の人はいるかね」

問う人 「知らないです。人の趣味なんて尋ねたことありませんから」

知る人 「なるほどね。まあ、極めて無難な言い方をしてしまえばだな、僕の趣味は山登りだとか囲碁だとかドストエフスキーを読むことだとか答える方が安全ではあるだろうね。少なくとも、会話を終息させる要因にはならんだろうなあ。君はどう思うね」

問う人 「何とも思わないです。人柄を知る手伝いにはなるでしょうけど、コアな話題じゃないでしょう。そもそも、趣味が合う夫婦なんているんですか」

知る人 「私は知らないね。ただ、お見合いの女性たちの目的は、同じ趣味の男性を探すことではないだろう。近い将来いっしょに暮らすことになるかもしれない相手だから、何を好む人なのか知っておきたい。これはごく自然な心情だと思わんかね」

問う人 「それはまあ、そうですね。でも、仕事が趣味だと聞いた途端引いてしまうっておかしくないですか。僕はそんな女性と暮らしたくないです」

知る人 「ということはだな、そんな君を理解してくれる人がいいってことだね」

問う人 「そういうことになりますね。でも、母にそう話したら、今時の女性はそんなこと理解してくれないよって。映画鑑賞とかウォーキングとか、テキトーに答えておけばいいんだからって言われたんですけど」

知る人 「その<テキトー>が君にはできないんだね」

問う人 「だって、後でウソがばれても困るじゃありませんか。素のままの自分を気に入ってもらわなきゃ意味ないと思います」

知る人 「よし、わかった。では、君のことを理解してもらえるような道を探ろう」

問う人 「お願いします。そのつもりで来たんですから」

知る人 「或るリサーチ会社の調べでは、趣味は読書だと答えた男女が多かったようだ。だが、そのレポートを精読すると、何か答えなきゃいけないという心理が作用したとみられる回答も少なくはなかったらしい。こういう人たちは、君のお母さんの言う<テキトー>に属すると言えるかもしれん」

問う人 「僕もたまには本ぐらい読みますけど、趣味と言えるほどじゃないし。それに、答えとしてはあまりにも当たり前過ぎて面白くないでしょう」

知る人 「趣味だと言えるほどの人は、大量に読むか、深読みするか、或いは一般的には知られていない作家のものを探して読むか、だろうな。少し前に芥川賞を受賞したピース又吉がいるだろう。彼は2000冊以上読んだと言ってるね。まあ、メジャーな文学賞をとるぐらいだから、もはや趣味とは言えんがね。読書に関して言えば、君の喜ぶ話をしようか。経営者で、塚本幸一という人がいた。もう亡くなられたが。知ってるかい」

問う人 「ワコールの社長だった方でしたっけ、確か」

知る人 「そう、日本一の下着メーカー、ワコールの創業者だ。塚本氏は、読書嫌いを公言していた。本というのは、どれも過去のことが書かれているのだろう、そんなもの読んで何の意味がある、とね。塚本氏の言動や経営姿勢などを見ると、無教養な人物でなかったのは確かだ。ただ読書をしなかったというだけだな。実体験や見聞による知識は、おそらく莫大に持っていただろう」

問う人 「本読んでる暇があれば、商売に精を出すでしょうね」

知る人 「出光興産の創業者・出光佐三氏は、幼少の頃から目が悪く、読書ができなかった。本屋で買ってきては、ただ積み上げていたそうだ。出光氏は、年商1兆円の巨大企業を築いた。ホテルニューオータニを創った大谷米太郎氏は、他にも鉄鋼や酒の販売などで財を成した実力者だが、何と、文字が読めなかったらしい。文盲だったんだな。まあ、わずか3人だが、本からの知識がなくても大経営者になれるという実例を挙げてみた。ビジネスマンとして、参考になったかな」

問う人 「ええ。でも、驚きはしないですね。ソロバンが弾ければ商売できるし、人望があれば人材も集まりますからね」

知る人 「君は、塚本氏や出光氏のような起業家になりたいかね」

問う人 「そこまでできるとは思ってないですけど、人並みで終わるつもりはないです」

知る人 「うん、その意気や良しだ。3タテ食らって逆に意固地になっているところも見受けられるが、総じて君には脈がある。仕事に打ち込む真摯な姿勢を理解してもらえれば、無趣味でも伴侶は見つかるよ。問題はどう理解してもらうかだな。仕事=趣味 という姿勢が女性に敬遠される理由は次の3つだ。

その1)家庭を顧みない人である。

その2)視野が狭い(人間として面白くない)人である。

その3)実は能力がない(つまり、時間ばかりかけている)人である。

・・・どうかね、意見があれば聞くが」

問う人 「僕の父も凄まじい仕事人間ですけど、うらやましいぐらい夫婦仲がいいです。小さい頃から、遊んでもらったことはほとんどないですけど、父の仕事の話は楽しいし、ためになるし」

知る人 「身近にいいお手本がいるわけだ。君のお父さんは、上に挙げた3つのいずれでもないということだね」

問う人 「そうです。だから僕も父の様な人になりたいんです」

知る人 「生きがいと言えるほど一つのことに打ち込めば、そこから世界が見えてくるし、人の心もわかるようになるものだからね。イキイキと働くポジティブな君を軸とした明るい家庭、という将来像をお相手に思ってもらえればいいんだ。楽しそうな人のそばにいると、自分も楽しくなる。子供ができたら、父親の躍動感に影響されて育つだろうね。元気をくれる頼もしい男性、というイメージを持ってもらえれば、第4戦は完勝間違いなしだ。どうだい、そんなイメージ作りをしてみようという気になれないかな」

問う人 「仕事の楽しさを伝えればいいんでしょうか」

知る人 「それだけじゃ足りないな。結婚相手を探している女性なら、頭の中で計算もしているはずだ。経済的にゆとりある暮らしができるかどうか。ただの仕事中毒ではなく、どこに行っても通用するフレキシブルな能力を備えた実務家であることをわかってもらう必要がある。シャープが本社ビルを売却しただろう。ソニーもパナソニックも、かつては不動の王者だったが、今ではどうだ。景気が良かった頃、ソニーの社員がこう言っていたのを新聞か何かで読んだことがある。

ソニーが潰れるとしたら、それは日本という国家が潰れる時だ。

・・・慢心以外の何ものでもあるまい。創業者の威光のおかげだということを忘れ、大企業病に陥っていたのだな。ソニーが無くなって困るのは、その力でメシ食ってる連中だけだ。君は会社に寄りかからず、自力で道を切り開ける器だと自分を評価できるかね」

問う人 「仕事人間はいいが、会社人間はダメだ。父にそう言われてます」

知る人 「うん、いい言葉だ。どこでも使える高い実務能力を有する人、将来何かやってくれそうな期待感のある人。そんな君を相手に伝えるにはどうすればいいか。自分で考えてごらん。それから、仕事という窓を通して広い世界を知っている、或いは知る可能性を持っている、そんな人間的な深さや幅、厚みのある男だとわかれば、お相手もきっと、君のその窓から世界を眺めたくなるだろう。日本電産創業者の永守氏を知ってるだろう。1年のうち、元旦の午前しか休まない強烈な仕事人間だ。休みたきゃ辞めろ、等々、個性的な発言も多い。増資の際の説明会で永守氏の話を聞いたことがあるが、実にエネルギッシュ、かつ、ユニークで人間臭い好人物という印象だった。知人からもらったリンゴでアップルパイを作って食ったらうまかった、といった家庭人的談話もある。こういう人は、間違いなく、時間のやりくりがうまい。仕事第一を公言し実践しつつも、家庭人としての役割も忘れていないんだな。1年364.5日働く人だが、永守家の夫婦仲が悪いという話は聞いたことがない。本当にデキる人物はね、意欲に任せて驀進しているように見えても、人心の要所は押さえているものだよ。私は、君ならできると思うんだがなあ」

問う人 「人としての温かさとか、生きてるっていう実感とか」

知る人 「そうだね。それが伝われば、ヨットだのダイビングだのと言ってる男連中の100倍は魅力的な人だとわかってもらえるさ。きょう私が君に話したことを、ご両親に言ってごらん。きっといいヒントをくれるはずだ。親子で話すときは、君の一番いい部分がでる反面、弱点も見られてしまう。親子の会話の中から、第4戦に臨むきっかけをつかめると思うのでね。いいかい、仕事が趣味、という言葉には、趣味レベルの仕事しかできないというネガティブな響きもある。そうではなく、職業と生活が渾然一体となった、機動力と同時に生活力、ひいては人間力に溢れたステキな男性なのだ、こんな人とはそう滅多に出会えるものじゃない、とお相手が俄然前向きになるように、いろいろと工夫してみるといい。君にはできるはずだ」

問う人 「今までのままの自分でいいんですよね」

知る人 「そう。ただし、君の魅力が伝わるような努力は必要だぞ。黙ってついて来い、と男が背中で言える時代はとうに終わっている。わかるね」

問う人 「カッコつけないで、自分をさらけ出してみます」

知る人 「ダメな男には仮面も必要だが、君は逆だな。素顔の邪魔になるものはすべて取り払うんだ。素で勝負、それも徹底的にね」

問う人 「中途半端はNGですね」

知る人 「やり過ぎと思うぐらいに自分を見せることだ。およそ偉大な人物というのは、いくら語られても語り尽されることがない。君にもそんな深さがある。自分を信じなさい」

問う人 「持ち駒は全部使えと」

知る人 「駒はいくらでも再生産すればいいさ。君という滾々と湧き出る麗水を、汲みにきてもらいなさい」

問う人 「僕は硬水ですか。それとも軟水」

知る人 「硬軟併せ持つ好男子」

(了)

 

本記事により、ひとつの深い疑問が抽出されます。題して、

芸術は高級、世俗は低級

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