五十肩は治るのか

結論から問う。五十肩は治るのか

問う人 「五十肩は治りますか」

知る人 「個人差がある。治る人もいれば、治らない人もいる」

問う人 「私はどちらでしょうか」

知る人 「わからんなあ。その質問には、おそらく医者でも答えられんだろうな」

問う人 「もうすぐ二年になりますが、いっこうに痛みが引かないのです」

知る人 「どんな医者にかかったのかね」

問う人 「まず近所の整形外科クリニック、続いて大学病院、最後にペインクリニックです」

知る人 「役に立つアドバイスなどはなかったのかな」

問う人 「ストレッチの方法なんかで、少しは役に立っているのもあります」

知る人 「たぶん、どこの医者からも軽くあしらわれたのだろう。違うかね」

問う人 「おっしゃる通りです。ああ五十肩ですね、って感じで」

知る人 「疾患といえるかどうかわからないような、あいまいなものだからな、五十肩というのは」

問う人 「治りますかって聞いたんです。そしたら、動かしていればそのうち使えるようになってきますよ、と言われました」

知る人 「まあ、その答えが最も妥当だろうな。もちろん個人差はあるが、いずれにしても、適度に使わなければ良くはならん」

問う人 「骨折やなんかと違って、医者から具体的なアドバイスがないのはナゼなんでしょうか」

知る人 「老化現象の一種だからだろうな。肌のシワ、白髪、白内障、加齢臭など、或る程度許容するしかないことが少なからずあるだろう。美肌は大きな市場を形成してはいるが、結局は問題の先送りに過ぎん。医療の限界がわかっているような状態に対しては、医者も力が入らんのだろうなあ」

問う人 「老化だからと、あきらめる他ないのでしょうか」

知る人 「そうは言ってないよ。改善の方法はあるはずだ。ただ、折れた骨が元通りになるように、スッキリ完治するのは期待しない方がいいかもしれんね。・・・さっきの医者の言葉にあった通り、使わなければ良くはならん。今はどうだ、痛くて眠れないような時がまだあるのかね」

問う人 「いえ、そういう時期は過ぎたみたいです。ただ、腕が上がらないのと、負荷をかけられないのとで、けっこう不便してます」

知る人 「五十肩には、関節の拘縮と筋肉の炎症のふたつがあるようだ。どちらも、痛くてたまらん時は医者に痛み止めをもらうか何かして、おさまるのを待つ他ない。この時期に動かすのは危険だ。今の君の状態ならば、少しずつ動かしていくのがいいね。動作の基本は、まずはストレッチ=伸ばす、だ。上でも横でもいい、壁を使って真上に伸ばすやり方もある。始めは三十秒ぐらいから、そして徐々に時間を延長するといいだろう。避けた方がいいのは、廻旋=ぐるぐる回すことだ。行ったり来たりの反復運動も良くない。あくまでゆったり伸ばすことから始めて、できるようになったら、最も楽な反復動作を加えよう。腕の曲げ伸ばしでも上げ下ろしでもいい。回すのは最後の仕上げと思っておいた方が良かろうね」

問う人 「そうしていれば、良くなりますか」

知る人 「なる。ただし、さっきも言ったように、個人差がある。まずはじっくりとストレッチから始めるんだな」

問う人 「ネット上には、五十肩に効く運動の動画なんかもありますね。何も試してはいないのですけど」

知る人 「それが賢明というものだよ。無責任な情報が飛び交っているからな。中には、腕立て伏せで治せなどと逆療法的愚行を推奨しているサイトもある。こんなのに引っかかったら大変だぞ」

問う人 「わかりました。真面目にストレッチから始めてみます」

 

 

五十肩は完治するのか

問う人 「完治は難しいかも、というお話でしたが、そのあたりを詳しくお聞かせいただけませんか」

知る人 「さっきも言ったように、五十肩は老化の一種だ。年を取れば体のあちこちにガタが来るのは当然のことであって、それが肩に来たのが五十肩だと言えるね。目がかすんだり、耳が遠くなったりするのと同じだからな、動きの悪い肩とうまく付き合っていく方法を考えるのも必要だね」

問う人 「だましだまし使う、って感じですか」

知る人 「まあ、そういうことになるだろうな。若い頃のように、重いバーベルを持ち上げたり、鉄棒で懸垂したりといった、強い負荷のかかる運動は金輪際あきらめるんだな。仕事は肉体労働ではないのだろう」

問う人 「ええ、いちおうホワイトカラーですので」

知る人 「気長に治しなさい。ただし、レントゲンとMRI検査だけは必ず受けなさい。骨に異常がないことを確認するだけではなく、筋線維の裂傷なども調べておいた方がいいからね。MRIなら、筋肉の劣化を画像で確認できる。万が一、筋肉に傷が付いていたりしたら大変だよ。画像診断を済ませて、それで異常が認められなければ、あとは徐々にストレッチして回復させる他はない」

問う人 「MRIってけっこう高額な検査ではないのですか」

知る人 「病院によって差はあるだろうが、だいたい五千円ぐらい見ておけばよかろう。ただ、左右同時にはできんから、両肩なら金額は倍だ。まあ、老後の不安を少しでも減らすために、健康管理に投資しておくべきじゃないかね」

問う人 「そうですね。今のうちに、悪いところは徹底的に治した方がいいかもしれないですね」

知る人 「肩の不具合をきっかけに、全身を見直すのもいいかもな」

 

 

これ以上悪化させないために、やっておくべきこと

問う人 「なってしまったものは仕方がないのですが、今以上に悪化させない努力も必要ですよね。どうすればいいんでしょうか」

知る人 「ストレッチを地道に続けて、或る程度回復してきたらだな、小刻みに使っていくことが大切だ。強い負荷のかからない軽作業を繰り返して、動くことに慣らすんだよ。おすすめは家事だ。炊事・掃除・洗濯。洗濯物を干す作業なんかいいだろうね。日常の中で悪くしたのだから、同じく日常の中で治すのが一番の近道だと思うね」

問う人 「日々繰り返していくのが最も無難なのでしょうね」

知る人 「すべては一日一日の積み重ねだ。一足飛びに行ける近道はないと思いなさい。肩の不具合をきっかけに、君の日常を根こそぎ見直してみてはどうかな。もう五十代なのだから、ここらでそうするのも損ではあるまい。違うかね」

問う人 「おっしゃる通りです。人生の終盤に向けて、暮らし方のメンテナンスをすることにします」

知る人 「奥さんも五十代なのだろう。夫婦で見直しあうのもいいんじゃないかな。お互い、何か新しい発見があるかもしれん。死ぬまで一緒に暮らすパートナーなのだから、相手の健康状態を詳しく知るのは大切だろう」

問う人 「そうですね。今度、ふたりで健康診断を受けてみます」

知る人 「それがいい。ついでに温泉でも行ってきなさい」

(了)

 

 

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