総理大臣とは、何者か(1)
【政治家の不正その他の悪行は、今に始まったことではありません。それにしても、昨今は目に余るものがあるように感じられますね。加えて、このたびの災害に対する首相の態度。最高位の人物がこれか…きょうから三回、総理大臣について語ります】
父「ほう、きのう、岸田総理が現地入りしたようだな」
娘「現地って、どこ」
父「能登だよ。今回の被災地の中心部だ」
娘「忙しいんだねえ、総理大臣って」
父「娘よ」
娘「なによ、あらたまって」
父「よく考えてみなさい。このたびの大地震がいつ発生したのか、覚えているね」
娘「元旦だったよね、一月一日」
父「そうだ。そしてきのうは一月十四日、つまりだな、発生から2週間だ。遅すぎると思わんかな」
娘「まあ、言われてみればそんな気もするけど。でもさ、首相ってのはいろいろ忙しいんでしょ。行こうと思ってても行けなかったんじゃないの」
父「ことは自国民の生命にかかわる。命以上に重大な問題などあるはずがない。現地が死に物狂いで闘っているさなか、首相はのんきに新年会をやってた、との情報もある」
娘「で、何、お父さんが言いたいのは、職務怠慢じゃないか、けしからんぞ、ってこと」
父「ううん、それよりもっと、何と言えばいいかな、つまりその、日本の総理大臣という役職が、そもそもそういうものなんじゃないか、って気がするんだな」
娘「職務怠慢で当たり前ってこと」
父「そう。もっと言えばだね、危機感の薄いサラリーマン政治家の頂点に座っているだけだから、有事の際には役に立たない職務なんじゃないか、岸田氏の資質にもおおいに問題はあるだろうが、それ以前として、有事にてきぱき動ける立場ではないんじゃないか、そういった組織編成にはなっていないんじゃないのか、と思えてならんのだな」
娘「なるほどね。つまり、何ごとも起こらないのんびりした時代向けの、お飾りみたいな役職ってことね」
父「そう。思い出すのは阪神淡路大震災と東日本大震災だが、どちらも日本の政治史上めずらしい野党政権時代だった。真っ先に思い浮かぶのは、阪神淡路大震災発生後、国会でおこなわれた村山首相(当時)の答弁だな。
『なんせ、はじめてだったもので・・・』
・・・村山氏はこう述べた。素直な心情か、弁解か。まあ、どっちでもいいんだが、とにかく、この言葉こそ、わが日本の首相の立ち位置を正確にとらえたものはないだろう、とわたしは思うね。君はどうだ」
娘「阪神淡路大震災のときは、まだ生まれてないからね、知らないわ。でも、東日本大震災のときはさ、作業服みたいなのを着たおじさんがテレビにしょっちゅう出てて、計画停電のことなんか説明してたよね。なんだか懐かしい。あ、懐かしがっちゃいけないよね、失礼」
父「災害に限ったことじゃなくてさ、何か大きな問題があったとき、誰かがそれを解決や改善に向かわせなきゃならん。そうして、最後に誰かが締めなきゃならんのだが、そういった要所要所の締めや調整のできる立場、それが総理大臣であるはずなんだな。ところがだな、ここ数年のコロナ禍でよくわかったんだが、有事の際にはもう、誰が何やってるんだかわからないことになった。こんなときこそ最高権力者の出番だろ、って言いたいんだが、総理大臣と言えば、あいもかわらず党内外の微調整しかやらん。あとは官僚任せだ。首相なんかいらんじゃないか、と感じたよ」
娘「そうねえ。いっそのこと、月替わりにしたらいいんじゃないの。はい、来月は〇〇さんが首相やってね、はい、その次〇〇さんがいいかな、って感じでさ」
父「ううん、さすがは我が娘。いいことを言うじゃないか」
娘「全然よくないよ。そんなことになったらさ、本当にこの国おしまいだよ」
父「まったくだ」
(了)
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