ものまね芸人、ただいま炎上中
【橋幸夫氏の葬儀に参列したものまね芸人の愚行が、集中砲火を浴びている。当人はいちおう謝罪しつつも、責められていることそれ自体をネタにして楽しんでいるようにも見える。 ”悪ノリ” のひと言で片づけていい問題だろうか】
知る人「死の儀式とは厳かなものだが、それをお笑いのネタにしようというのだから、ああ、ついにここまできたか、われら日本人は…と嘆くしかなかろうね」
問う人「非常識なのは一芸人ですから、その件をもって『われら日本人…』と嘆ずるのは、やや早計ではありませんか」
知る人「かくも馬鹿な輩が現れたのはなぜだ。彼に仕事を与える者がいるからだ。愚行に対して猛然と抗議し、くだんの芸人に土下座させるほどの怒りを示す者が出てこないのはなぜか。批判しつつも、実は事の成り行きを楽しんでいる連中がわんさといるからだ。SNSが発達して以降、かつては冗談のネタにすることさえ憚られたような蛮行が、いたるところで見られるようになった。それもこれも皆、需要があるからに他ならぬ」
問う人「つまり、今回の件は、現代社会の構造的問題である、と」
知る人「その通り。眉をひそめられるような、後ろ指さされるような愚行であっても、市場原理がそれを支えている以上、どうしたってなくなりはせぬ。モグラたたきみたいなものだよ。テレビを筆頭とするマスコミ連中は、厳しく追及し糾弾するかの如き姿勢を見せる一方、彼らも実は楽しんでいるのだな。のぞき見趣味とは、テレビのお家芸なのだから。かなり古い話で恐縮だがね、タレントの三波伸介氏が亡くなった際、遺族に向かってマイクを向けたマスコミ関係者がこう尋ねた。
今、どんな気持ちですか。
・・・肉親を失って哀しみの底におられるご家族に向かってこんな尋ね方を平気でする。1982年のことだがね。しばらくそっとしておいてあげるのが礼儀というものだが、マスコミという組織で培われた野次馬根性を抑えることができなかったのだな。そして、かくも非常識なふるまいに対しても、ひそかに楽しむ輩が確実にいる。というわけで今回の件は、マスコミの恥知らず体質を改善するきっかけととらえるべきであろう。芸能人の話題は大嫌いだからこのあたりでもうやめるがね、ありきたりの諺で締めれば、
『人の振り見て我が振り直せ』
・・・ということだ。ネット上で騒いでいる連中もしかり。他人を責めるのは気持ちいいものだ。スポーツの後の如き爽やかさに浸っていることであろうが、実は自分たちも根は同じという自覚を、この機会に持つことだな。ああ疲れた」
(了)
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