猛暑でも マスク外さぬ 私達
【40度前後という異常な暑さの中でも、マスクをし続ける人々の姿が目立つ昨今である。この事実を、いったいどう解釈すればいいのだろうか。頑健なスポーツ選手でさえ体調を崩す状態にあって、彼らは何を恐れているのか…】
知る人「コロナは再燃しているようだし、百日咳やインフルなどもあった。夏風邪は治りが遅い、と昔から言われているね。こんな状況では、マスクを外せぬのであろうな」
問う人「まあ、それは理解できるのですが、でも同時に、熱中症の危険性が最高潮に達した時期でもありましたよね。そういった中で、耳と口をがっちり塞いでいる姿、正常な心理による行動とは思えないのですが」
知る人「それが著名人の発言であれば炎上だな。まあ、ここは誰にも読まれぬ自由な場だから良いが」
問う人「詳しい数は調べてませんけど、熱中症で搬送された人の数って、そうとうなものだったのではありませんか」
知る人「私も詳しい数は知らぬが、そうだろうね。ところで今の話だと、感染症と熱中症を天秤に掛けたらどうなるのか、などといった不毛な議論を誘発しかねぬであろう。どちらを優先すれば、という問題ではない」
問う人「まあ、それは確かにそうですね」
知る人「猛暑でもマスクを外せぬ理由は、人それぞれであろう。この問題については、当サイトではすでに何度か論じてきたのでな、ここで繰り返すことはせぬ。ただ、立場上、そうせざるを得ぬ人もいるという点だけは、万人が等しく理解しておかねばなるまい。常識的に考えてみて、以下の如き方々だ。
1)病原菌保有者またはその疑いのある方
2)体力が落ちていて、ひとたび感染したら重症化の恐れのある方
3)医療福祉系業務の従事者または独立事業者等の、仕事を休めない方々
・・・これら以外にもだな、例えば医者嫌いだとか、信条として医療保険を使いたくないだとか、個別にみればいろいろ出てくるだろうね」
問う人「はあ、それはよくわかるんですよ。でも、マスクしてる人みんながそうじゃないでしょう。1)~3)に該当しないけどマスク外せない人たちって、かなりいる気がするんですよね」
知る人「感覚でものを言うのは危険だが、私も同感だよ。会社組織の中でも、今はもう、個人の選択に任されているからね、マスク無しで電車やバスを運転する姿は珍しくなくなった。それぞれの考えや主義の問題だから、他人がとやかく言うことではないのだな。だがね、かつてこの場で論じた通り、ここにはわれら日本人の弱さが現れている。この点だけはあらためて指摘しておかねばならぬ。見えない敵。どこに潜んでいるのか皆目わからぬ、まるでゲリラの如き相手。かくも不安な状況に追い込まれたとき、わがやまとの民は、なすすべを持たぬのだ。四六時中武器を振り回しているわけにもいかぬから、防御を怠らぬというわけだな」
問う人「だあれもいない早朝や深夜、マスクしてジョギングしてる人、今も見かけますよね」
知る人「コロナが蔓延し、国がしかるべき措置を取っていた急性期は、マスク無しに向けられる視線には共通のものがあった。旧日本帝国時代にさんざん使われた言葉 ”非国民” というやつだ。自粛警察というとんでもない輩が跋扈したのもこの頃だったね。いまだにこの非国民的発想の者はいるだろうが、もはや主流ではなかろう。現時点における主流派は、『巷の情報はあてにならぬ。菌はどこに潜んでいるかわからぬから、とにかく一日中鼻と口を隠して歩くしかない』と思っている人々だ。これぞまさに、見えない敵の存在を恐れ続ける島国人の典型的な姿だよ」
問う人「つい先日のことなんですけど、ほら、スーパーなんかの入り口に、消毒用のアルコール噴霧器が設置されてるでしょう、足で踏めば出てくるものですけど。清算をすませてから、あそこに行って、買い物かごから一つずつ品物を取り出してですね、順番にアルコールをかけてくんですよ。それが終わると今度は、一点一点、小袋に詰めてゆくんです。70歳前後の男性でしたが、あきれてしまいましたねえ、ホント」
知る人「アルコール噴霧器は多くの人が使うものだよね。そうやって独り占めして周囲に迷惑をかけてでも、見えない敵に備えたいのだな。たかがマスク、と思ってはいかん。かくも小心翼々たる醜態こそ、戦後80年に渡って米国の庇護を受けて経済活動偏重で生きてきたわれら日本人の姿なのだ」
(了)
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