Eスポーツって何だろう

【ゲーム人口が爆発的に増大している。国際オリンピック委員会は積極的に動いており、正式種目化に向けて地ならしが進んでいると言っていいだろう。さて、座って興じるゲームが<スポーツ>と呼ばれるのに違和感を覚える方々はいるのか…】

 

 

知る人「正確には eスポーツ だそうだが、文頭に来る場合のみ大文字でいいそうだから、当サイトの表題はそうなっておる」

問う人「道歩きながらスマホ見てる人で、スマホの向きが横になってたら、ゲームか動画のどちらかでしょうね。そんな姿、全然珍しくなくなりましたねえ」

知る人「そうだな。縦むきのままできるゲームもあるが、まあ君の言うとおりだろう。ゲームをやめさせられたら余暇にやることがなくなるという人々は、世界中にごろごろいるだろうな」

問う人「この流れ、もはや止められないんでしょうね」

知る人「一大産業に成長し、莫大な雇用と競技人口を抱えて、技術革新の歴史にもおおいに関わっているとなれば、この勢いを止める力など存在せぬし、止める必要もなかろう。21世紀の中核産業であり、遊興の主役の座を獲得したと言って差し支えあるまい」

問う人「でも、<スポーツ>と呼ばれるのだけは違和感あるんですよね。どうですか」

知る人「肉体の運動量だけで言うなら、そぞろ歩きの如きゴルフよりもさらに動かない競技だからな。オリンピック種目としては該当しないだろう、と思う人も多かろうね。ただ、競技としてはどうだ。じゅうぶんに成立しているではないか。これはこれでありだ、と私は思うがね」

問う人「ひたすら画面を見てるのって、健康にも悪い気がしますけど」

知る人「まあ、程度の問題だろう。ほどほどにやれば、脳が活性化して良いのではないかな。今後、認知症予防や治療にも、おおいに活用されるであろう。頭の呆けを防ぐコツは、脳のネットワークの活性化だからね」

問う人「ゲームの中には、戦争とか殺人とか、とにかく人やモノを傷つけたり破壊したりして楽しむものがとても多いじゃありませんか。ああいうのは健全とは言えないと思いますが」

知る人「そうだね。あんなものがスポーツと呼ばれるなら、私も先頭に立って反旗を翻すよ。二十年以上前のことだが、米軍の兵士の話を聞いたことがある。彼は中東で戦い、イスラム圏の敵兵に向かってミサイルを何発も打ち込んだ。昔のような肉弾戦、白兵戦ではなく、建物の中の指令室みたいな部屋にこもり、モニター画面とにらめっこして、ただひたすらボタンを押すだけ。そうしながら彼は何度も自分に言い聞かせたのだ。

これはゲームじゃないんだ。本物の戦争なんだ。

…これを思い出すにつけ、私はある不安に襲われるのだな。今の若者は、幼いころからゲームに興じているだろう。それらの中には戦争や殺人の内容もあろう。ルーカスの映画の如き仮想空間であっても、何かを破壊することに変わりはない。こんなもので育った若者が、兵士として戦場に送られる。たぶん敵も同様であろう。つまりだな、ゲーム世代同士で、ゲーム感覚で殺し合いをやるわけだ。かくもおぞましき悪夢が現実となれば、仮想と現実の区別がつかぬ者が現れるのは道理と言わねばならぬ」

問う人「簡単に他人をあやめる者が後を絶ちませんものね」

知る人「彼らの意識の中には、リセットボタンを押せば相手は蘇るという感覚が根付いているのかもしれぬ。こうなればもう、生命倫理学などの出る幕はない。神の被造物たるわれら人類は、いよいよ終末を迎えるのだと考える他あるまいね」

問う人「今、パチンコ業界は業績低迷に苦しんでいるでしょう。背景には与党議員なんかもいるみたいですから、ひょっとして、低迷の打開策にオリンピックを利用するんじゃないかな、なんて馬鹿なことを思ったりもするんですよね」

知る人「ブラックジョークだな。もしそうなれば、よし、私が命名してあげよう。<Aスポーツ>はどうだね。addictionの頭文字を採ってみたのだが」

問う人「いやいや、ご冗談を」

(了)

1628字

 

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