五十肩は、しつこい

肩に激痛が・・・まずは整形外科を受診する

夫 「ぐわあ、ぐわあ、ぐわあ」

妻 「何よ変な声出して。何の真似」

夫 「いよいよ肩がおかしくなった。すさまじい痛みだ」

妻 「もう一年くらい前だっけ。右の肩が痛くなったのは」

夫 イトーヨーカ堂にジャケットを買いに行った時だからな。ちょうど一年だ」

妻 「肩が開かないから、着脱しやすいように、一回り大きめのを買ったんだもんね。あの時からでしょ、おかしかったのは」

夫 「今日のはいわゆる急性症状ってやつだ。と、とにかく痛くてたまらん。我が家に痛み止めはないか」

妻 「駅前のドラッグストアで買ったロキソニンが少し残ってたと思うけど、たぶん効かないと思うよ」

夫 「市販薬は効かないというのは常識だからな。ううん、困った。これじゃ仕事にならん。いよいよ俺も四十肩か」

妻 「五十肩でしょ。あと二年で五十歳なんだから」

夫 「四十肩と五十肩って、どう違うんだろうな」

妻 「知らないよ。とりあえず、医者行ってくれば。駅前の整形外科は八時までやってるよ」

 

妻 「痛みは治まったみたいね。やっぱり専門家に診てもらうのが一番だね」

夫 「医者の治療が良かったとは思えんね。時間が経ったから楽になっただけだろう。右の三角筋に思い切り注射をぶち込みやがった。全然効かないよって言うと、大丈夫、時間が経てば効いてきますからだと。医者に行って二日経ったんだぞ。今頃効く注射なんぞあるものか」

妻 「まあ、しばらくは様子見だね」

 

 

医者が信用できなくなると、さらに胡散臭い連中を頼るようになる

妻 「何か届いてるよ。通販で買ったの」

夫 「そう。五十肩治療の神様と言われている整体師が出しているDVDとその解説本だ。ちょっと高かったが、思い切って買ってみたんだ」

妻 「整形外科でリハビリやってたんでしょ。ダメだったの」

夫 「どうも医者が信用できん。腕の上がり方を毎回チェックするんだが、真横の方向しか見ないんだ。はいゆっくり挙げて・・・四十五度ですね、なんて言うんだが、腕を使うのは横方向だけじゃなかろう。あんなヤブ医者に金と時間を費やすなんて馬鹿馬鹿しいと思ってね」

妻 「ふうん。ま、効けばいいんだけどね。どうだろね」

夫 「必ず効果あるさ。さっそく今夜から五十肩体操スタートだ」

 

妻 「近頃DVD観なくなったね。効果なかったの」

夫 「全然効果ナシだ。ただの体操の動画がほとんどで、五十肩に効くと強調している運動は、難易度が高すぎて無理だ。ダイエット体操としてはいいのかもしれんが、五十肩は悪化するだろうな」

妻 「メールでのサポートが付いてたんじゃなかったっけ」

夫 「おそらく購入者全員に送りつけているのだろう、当たり障りのない一般論を一方的に書きたてているだけで、情報として何の役にも立たん。質問しても、めんどくさそうな返事しか返って来ん。詐欺とまでは言わんがね、広告に大いなる偽りありだな」

妻 「でもさ、四十肩も五十肩も、半年だか一年だかで、スーッと治っちゃうって聞いたよ。もう少し辛抱すれば納まるんじゃないの」

夫 「痛み初めて一年だからなあ。そろそろだと思うんだがなあ」

 

 

妻 「どうしたの、その顔。ケンカでもしたの」

夫 「電車に乗ってる時に転倒したんだ。肩が痛くて腕が上にいかないものだから、ついに吊り革が持てなくなった。ポイント切り替えで揺れた時に、体を支えきれず、扉に激突さ。ひどい顔だろ」

妻 「五十顔」

夫 「つまらんシャレはやめてくれ。商談中、鞄からプレゼンの資料を取り出すのもひと苦労なんだからな」

妻 「仕事にも差支えるんじゃあさ、何とかした方がいいよね。別の医者行ってみれば。街のクリニックなんかじゃなくて、もっと大きなところに」

夫 「藁にも縋るってやつか。そうだな、大学病院にでも行くか」

妻 「大きな病院はさ、確か紹介状が必要だと思うよ。駅前のヤブ医者に書いてもらえば」

夫 「またアイツのところにか。ううん、二度と顔を見たくなかったんだが、仕方がない。今度行って、もらって来よう」

妻 「怪しげなDVDよりはいいよ、その方が」

 

 

大学病院は、頼りになるのか

妻 「ずいぶん遅かったね。やっぱり、おっきな病院は混んでるんだね」

夫 「レントゲンとMRIの検査をした。いずれも異常ナシだ。整形外科部長とかいう偉そうな医者でね、五十肩は動かせば徐々に治りますよハイ真上に挙げて、次、真横・・・って感じで俺の動きを見た後、理学療法士から運動の指導を受けろ、それでもダメなら3か月後にまた紹介状持って来いだとよ。大学病院ってのはさ、生きるか死ぬかの重症患者がいっぱい来るところだろ。俺なんか相手にせんのだよ。行かなきゃよかった」

妻 「医者からすれば、五十肩なんて疾患のうちに入らないのかもね。でもさ、何かアドバイスあったんでしょ」

夫 「普段の生活でこうしろとか、仕事中の留意点とか、とにかく何もない。姿勢を良くしろとか、重量物はできるだけ持つなとか、何かひとこと添えてくれても良さそうなもんだが。ま、自分で考えろってことか」

妻 「町のクリニックもだめ、大学病院もだめ、通販も胡散臭くてだめ。これから何を信じていけばいいんだろね」

夫 「自分しかなかろうな」

(了)

 

 

 

 

 

 

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