20世紀と21世紀。いったいどこが違うのか

【わたしは20世紀の終盤に生まれ、育った者です。かつては新世紀という言葉に胸を躍らせ、おおいに期待したのですが、そこに着いてみれば、なんてことはない、ただの前世紀の延長に過ぎません。期待したわたしが愚かだったのですね】

 

外圧頼みの島国根性を捨てよ

問う人 「新世紀という言葉に過大な期待をかけすぎたのでしょうか」

知る人 「実に日本人的な発想だな。君は間違いなく純正日本人だ」

問う人 「お褒めの言葉ではないようですが」

知る人 「侮蔑しているのだよ。が、君に対してだけではなく、私自身に対してもね。私たち日本の庶民は、上からの改革か、或いは外からの圧力か、とにかく力の強い人々による導きに頼って生きてきた。我が国には民主主義が根付いていないと言われる所以だな」

問う人 「明治維新あたりまで遡りますか」

知る人 「そうだな。島崎藤村の名作『夜明け前』を読んだかね。あれは維新前後の時代を描いたものだが、こんな表現が何度も出てくる。

御一新

・・・明治維新の旧称だがね、<新>の字の前に<御>という冠をつけるところが、いかにも我が国らしいだろう。偉い方々に世の中を新しくしていただいた、という、いわば 待ち の姿勢がありありと伺える表現だ。流血革命を礼賛する気は毛頭ないが、誰かが変えてくれると期待してじっと待っている民衆の姿は、ううん、いかがなものかねえ」

問う人 「わたしの考え方はまさにそれだと」

知る人 「その通り。島国だからこそ、常に外から情報を仕入れ、自分たちで明日を切り開いていかねばならぬはずなのにね。日本人は信仰心が薄いというのが通説だが、勧善懲悪の物語の成立を、国中で信じ切っているのかもしれんなあ。黄門様の印籠を見て悪党どもがひれ伏す様を、みんなが待ち望んでいると言ってもいいかな」

問う人 「では、どうすればいいのでしょうか」

知る人 「悪がひれ伏す印籠を、君自身が手に入れるのだよ。それしかあるまい。正義の味方など、どこからも現れやしないのだからね」

 

20世紀とは何だったのか、よく理解してから行動せよ

問う人 「何から手を付ければいいのかわかりません」

知る人 「20世紀についての復習から始めるのがよかろうね。T型フォードが売り出されたのが1908年、以来、大量生産➡大量消費 という世の中の図式が定着した。効率よく廉価に大量に作れば労働者の賃金は上昇し、購買力がついて消費活動が旺盛になる。もっと便利に・もっと楽に と突っ走った100年だったと言っていいだろう」

問う人 「今もそれは同じではありませんか」

知る人 「だから問題なのだ。世の中ちっとも変っちゃいないじゃないかという君の認識の根底にあるのはこれだよ」

問う人 「環境破壊が著しく進行しても、大量消費の波はおさまらないですね」

知る人 「地球環境などの大問題を持ち出さなくとも、作れ作れ売れ売れ買え買え捨てろ捨てろ の生き方が多くの欠陥を内包しているのは、誰の眼にも明らかだろう。少なくとも私たち先進国の民はだな、平日に稼いだ金を週末に浪費する暮らしを長い間続けてきた。いくら稼いだ、何をどれだけ購入した、どれだけ旨いものを食った と、家計簿風に言えば、収入と支出双方にえんえんとエネルギーを注いできたんだな。その結果、いよいよ売る物も買う物も尽きて、人間自身を商品化する時代が到来した。顔、肌、体型はおろか、ついに遺伝子まで売買の対象となりつつある。人間は、それ以上でも以下でもなかったはずなのだ。だが、一線を越えてしまった」

問う人 「来るところまで来た、ってことですね」

知る人 「かつて三島由紀夫が面白い予言をした。例の、割腹自殺の少し前の講演での発言だがね。

人間性をとことんまで解放するとどうなるか。必ず、 自分が怖い という時がやってくる。

・・・どうだい、昨今の世の中を見渡してみ給え。文豪の言った通りになっているではないか。欲望が火をつけた衝動による社会問題や事件・事故の何と多いことか。人類は万物の頂点だと信じている者はたくさんいようが、それはあくまで<種>としての話だ。個体としての人類すなわち私たち一人一人は、命ある存在としては最低のことをしていると言う他あるまい」

 

大洪水が起こるその前にやるべきことは何か

問う人 「ううん、ますますわからなくなってきましたが」

知る人 「何がわからんのかね」

問う人 「自分はどうすればいいのか、ということがです」

知る人 「新しい生き方を実践し、それを発信し続けるのだよ。今はとにかく情報の拡散が異常なほど速い。それを狙ってあまたのメッセージが乱れ飛んでいるから、情報の海の中で頭一つ抜け出ようとするのも容易ではないが、少しずつ仲間を増やしていくことで、いつか君の生き方が一気に地球の裏側まで拡散する可能性だってあるではないか。インターネットが無駄な消費を煽っているのは事実だが、賢く利用すれば意外に面白いことができるかもしれないからね。これは20世紀にはできなかった利点だな」

問う人 「わかりました。まずは自ら実践するところから始めてみます」

知る人 「わかってくれたようだな、21世紀の主役は他でもない、君自身だということが」

(了)

 

 

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です