2020年、東京五輪。まったく興味なし
【2020年東京五輪に期待していることは?】
1)日本経済への貢献 68%
2)日本全体の再生・活性化 52%
3)国際交流の推進 34%
4)スポーツの振興 30%
5)観光の振興 29%
(出典:2020年東京五輪に関する世論調査 2017年10月、2479人から回答 NHK)
妻 「お帰り。ん、どうしたの、コワイ顔して」
夫 「夕方から会議だったんだけどさ、ムカついて」
妻 「あら、またできそうにない高邁な理想を部長さんが言い出しちゃったの」
夫 「それならまだいいんだ、きょうはね、最後の方で2020年のオリンピックの話題になってさ、ま、話が脱線するのは毎度のことだからいいんだけど、黙って聞いてるとさ、景気の底上げだの観光客誘致だの、とにかく業績アップのことしか言わないんだ。すっかり気分を害しちゃったよ」
妻 「ふうん、でもさ、営業会議でしょ、それがフツーなんじゃないの。 ニッポン、いくつメダルとれるかなあ なんてことを営業部長さんが先頭に立って言うのもどうかと思うんだけど」
夫 「・・・んー、落ち着いて考えれば確かにそうだ。そんな話は会議が終わってから有志だけでやってよ、って思うよなあ。んー、でも、納得いかない」
妻 「わかるよ。要するにさ、ワタシたちがいつも憂慮してることと全く同じベクトルで話されたからでしょ」
夫 「そうなんだ。経済効果しか考えてない。オリンピック推進派の元首相やなんかと同レベルの話題を向けられたんでね。それで、頭にきてしかたがなかったのさ」
妻 「わかるわかる。不愉快だよね、確かに」
五輪に興味ない理由(1)金の話が多過ぎる
夫 「政治家や土建屋が五輪需要に期待するのはわかるんだけど、僕らみたいな一般人までがさ、メダルの数より景気浮揚への期待を先に語るって、どっかおかしい気がするんだよね」
妻 「うんうん、ワタシもそう思う。スポーツの祭典なのにさ、先に経済的な方向から入っていくのは不純だよ、まったく」
夫 「日本が不況のどん底にあってさ、ワラにも縋りたいような状態ならわかるんだ。でも、そこまでじゃないだろ。まあ、莫大な赤字を抱えてるのは事実だけど」
妻 「すぐ銭勘定しちゃうのも、島国根性なのかしらね」
夫 「外圧に対する防衛意識から、そうなっちゃうのかもしれないね。でもさ、なんか寂しいんだなあ。全種目で金メダル取って、世界を見返してやろうぜ、なんて威勢のいいコト誰も言わないんだもんな」
妻 「高度成長の頃の成功体験が忘れられないのかも。何でも作れば売れたなあ、って」
夫 「みんなでいい暮らしをしようっていう、20世紀から続いてる流れが生きてるんだね、きっと。オリンピック競技にはたくさんの夢があると思うんだけど、暮らし向きを良くしたいっていう気持ちがそれに勝るんだね」
妻 「それがまさに日本人的ってことなんだろうね、イヤだな」
夫 「金の亡者ってのはキツ過ぎる表現だけどさ、純粋にスポーツ観戦を楽しめる心のゆとりを、僕らはいまだに持つことが出来ていないのかもしれないね」
妻 「20世紀の垢がこびりついちゃってるんだね。まずは身を清めなきゃ」
五輪に興味ない理由(2)皆を同じ方に向かせることへの反発
夫 「僕らの国ってさ、 国民的○○ っていう言い方よくするよね」
妻 「国民の最大の関心事は・・・みたいな感じの報道が多いものね」
夫 「サッカーのワールドカップなんかさ、その典型だよ。 全国民一丸となって、 みたいな表現が、何の臆面もなくスラスラ口をついて出てくるんだよな、アナウンサーなんか」
妻 「みんな同じ方向いてると、マスコミは楽だよね。世論操作はカンタンだし、知らせたくない深刻なニュースの隠れ蓑としても使えるしね」
夫 「こんな時にさ、かつての大政翼賛会だ、大本営発表だ、って、戦前との共通項を探ろうとする人がいるよね」
妻 「うん、いるいる。必ず出てくるんだよね、そういう議論が。でもさ、クサイものに蓋をしたがるのはいつの時代もどの国民も、ある程度は同じじゃないのかなって思うの。誰だって、悲しい知らせより楽しいニュースに触れていい気分になりたいじゃない」
夫 「そうなんだ。クサイものに蓋をしようとしている人が多いものだから、全体主義だあ、みたいな硬派の主張を振りかざして危機感を煽りたいんだろうな。確かに 右向け右 って感じの国民性はあるけど、でも僕は、日本人はバカじゃないと信じるね」
妻 「ワタシも。右向け、なんて誘導されなくたって、みんな向きたい方に向くよ、きっと」
夫 「国民的○○ ってのはさ、為政者にへつらう御用マスコミが好んで使う、ご機嫌伺い用語なんだな、言ってみれば」
妻 「オリンピックには興味ない、って言われれば、え、何で興味ないの、ってとこから議論を構築できるのにね。何で一色に染めたがるのかしら」
夫 「寡黙な国民性がまだまだ生きてると思い込んでるんだね。もう21世紀なんだ、僕らもずいぶん成長したってことが理解できないんだね、いまだに」
妻 「理解したくないのかも。物言わぬ民でいてほしいんだね」
どんな五輪なら興味を持てるのか
夫 「君も僕も、スポーツ好きなのにさ、オリンピックには興味ないって変だよね。どうすれば関心が持てるようになるんだろうか」
妻 「スポーツ選手になってほしいんだよね、政治家も役人も、みんな。関係者全員がさ」
夫 「純粋になれってことかい」
妻 「ううん、ピッタリそうじゃないけど、近いね。オリンピックで金儲けしたい、オリンピックで売名したい、オリンピックで地元の支持率上げたい。いろいろ思惑はあるだろうけど、すべての打算的な考えがさ、結局は選手たちの熱い汗に負けちゃうって言うのかな」
夫 「最後には、ええい、とにかくいい試合してくれよ、ってとこに落ち着くって感じかな」
妻 「そうそう。その人たちの頭の中の優先順位表がさ、最後には選手たちの汗に首位を譲るってことかしら」
夫 「能天気、楽観的。何だかんだ言われそうだけど、そこに落ち着きたいよね。スポーツはスポーツ。それ以上でも以下でもないってことを、みんなが認識して、とにかく大会の最後まで足並み揃えようぜ、って気持ちになってくれれば、経済効果以外の何かを残せるオリンピックになると思うよ。僕はそう信じたいね」
妻 「こういう話ってさ、やたらと厭世的、或いは諦観的になって、結局世の中○○じゃないか、みたいなところに落ち着かせたがる輩が多いのよ。ホント困っちゃう」
夫 「何があろうと理想を忘れちゃダメなんだよ、絶対にね」
(了)