まじめに生きても、報われない。

【世の中って不公平ですね。すごくまじめな人が一生涯苦労し続けて、ずるがしこいヤツが出世したり、大金持ちになったり。まじめにコツコツ・・・っていう生き方は、これからの日本にはなくなっていくのではないでしょうか】

 

知る人「正直者が損をする、善人が早死にする、悪い奴ほど長生きする・・・昔からよく言われてきたことだな」

問う人「昔も今も、そしてこれから先も、何も変わらないのでしょうか」

知る人「収穫の八割を年貢として持っていかれていた時代よりはよくなったのだろうがね」

問う人「それは、為政者と庶民の関係でしょう。現代では、庶民間に著しい格差、不公平があります。下積み、という考え方もなくなりましたね。情報化社会のおかげで、隣のおねえちゃんが突如スターになったりするご時勢です。一から順に学ばなくとも、オイシイところだけつまみ食いしても有名になれるんですから。ああ・・・」

知る人「お笑い芸人にしても、ミュージシャンにしてもしかりだな。師匠や先生のもとで基礎からたたき込まれ、寝食をともにしながら生き方まで学ばせていただく、というのがお決まりのコースだった時代はずいぶん遠くなった気がするな」

問う人「なぜこんな時代になったのか、そして、この状況を諦めるしかないのか・・・」

知る人「下積みという言葉について考えてみよう。下から順に、一から十までひとつひとつ積み上げていって、基礎を揺るぎないものとしてから、ようやく第一歩を踏み出す。そうやってのし上がってきた人は、レベルが高いし、いざという時にふんばりがきく。歌手で言えば、もうずいぶん前に亡くなったが、淡屋のり子がそうだったな。彼女から見れば、昭和の歌姫・美空ひばりですらダメだったそうだ。晩年、こんなことを言ってたな。

・・・歌の心を知らない<歌屋>が増えた。本物が忘れられていく。

この言葉、いまやあらゆる職業について言えるかもしれん」

問う人「手っ取り早く出世できる道があるからでしょうね」

知る人「そうだね。とりわけ、情報化社会に馴染みやすい分野でそれが目立つね。地味な職人の世界では、今も数百年前と同じやり方が受け継がれていたりする。要するに 市場 だな。金儲けのネタとして使えるものは、熟するのを待たずすぐ使う。なんせ先に市場を抑えたものが勝ちだからな。小説の新人賞などいい例だよ。そのまま本にできる長さの、400字詰め原稿用紙換算で350枚以上の作品を求める登竜門が実に多い。昔のように、編集者がつきっきりで新人を育てるなんてことはないようだな。いちおう担当者はつくが、すぐ次の新人に目がいってしまう。そこにあるのは、新人作家を商品製造者として扱う姿勢だ。アパレルメーカーと同じだな。彼らは企画だけして、あとは外注に出すだろう。作家が出版社の下請けみたいになっている」

問う人「どこも似たようなもの、ということですね」

知る人「そう。モノをつくる人間などどうでもいいのだよ、生産物が売れてくれればね。売れなくなれば、また売れるモノをつくれる奴を探す。お笑い芸人を見なさい。一発芸、という言葉が当たり前に使われているだろう。客を一瞬だけ笑わせてオシマイ。すぐに飽きられる。吉本興業が芸人の学校を運営しているが、あれは促成栽培の工場みたいなものだな。日本語の基礎も、日本人としての品格も何もない、放し飼いの動物みたいな連中ばかりが卒業していって、公共の電波に害毒をまき散らしている。いつだったか、フジテレビがこんな広告を出したことがあった。

中高生は、カネになる

・・・たしかバブルの頃だったな。テレビ局のスカウトらしき男が、街をゆく人々の端に腰掛けて群衆を品定めしているがごときポスターだった。有名になりたがる愚かな若者をうまく釣り上げて稼がせて、上前をはねる。あれを見た時、ああ、マスコミは地に落ちた、こいつらみんな人間のクズだ。そう思ったものだよ」

問う人「これからますます、こんな時代がすすんでいくのでしょうか」

知る人「悪くなることはあっても、良くはならんだろうな」

問う人「絶望的ですね」

知る人「絶望と絶望的は違う。我が国もまだまだ捨てたものではないぞ。どうすれば現状を打開できるか、次回に考えてみよう」

・・・以下、 まじめに生きたから、報われる  に続く。

1749字。45分。

 

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