ネット情報、ウソだらけ

【かつては専門家にお金を払って教わっていたことが、近頃は検索して知ることができますね。これ自体はいいのですが、一言で言えば玉石混交、ニゼ情報が飛び交っています。難しい時代ですね】

 

 

知る人「偽情報に騙されて、ひどいめにあったのかね」

問う人「いえ、そこまでは。ただ、何を検索しても、出てくるのはウソばっかりで、ウンザリしてしまいます」

知る人「ウソばっかり、ということはなかろう。確かに不純物・夾雑物も混ざってはいるが、君の質問にあるように、かつては有料だった情報がタダで手に入るようになったのは喜ばしいと思うがね」

問う人「ええ、それは確かに。でも、ホンモノにたどりつくまでに、ずいぶん時間がかかってしまうことも少なくありません。出版物なら、或る程度の倫理規定みたいなものがあると思うのですが、インターネットには業界団体もないですし、まさに野放しではありませんか」

知る人「何らかの規制、或いは取り締まりが必要ということかな、君の考えは」

問う人「そうです」

知る人「君もよくわかっているように、インターネットに国境はない。言語の制限も表現の規制もない。公序良俗違反は検索エンジンが削除したり、何らかの対抗措置はとられるが、それらには法的効力がない。炎上だの何だのとしょっちゅう騒いでいるが、ああいうのも新手の売名行為と言っていいだろうな。さらに、ネット上では匿名での放言や誹謗中傷がやりたい放題だ。今は過渡期かもしれぬが、それにしても無秩序に過ぎるね」

問う人「ネット上に秩序を求めるのは無理なのでしょうか」

知る人「無理とは言わぬが、徒労に終わる可能性が高いね。それよりも、偽情報に踊らされない賢明なユーザーを育成する方が有益だと思うが」

問う人「テレビだって、映画だって、倫理規定があるでしょう」

知る人「その程度のものなら、いずれは整備されるに違いない。心配いらんよ。だが、ネット情報というものは、私たちの五感のほとんどに訴えてくる。孤独感・疎外感・閉塞感などが心の底に溜まっているのが現代人だからね。そこにインターネットは巧みに忍び寄り、いつの間にかその人の体内で、まるで血液のように循環し始める。弱いところを突いてくるってわけだな」

問う人「規制に頼るのではなく、受け手のレベルを上げろとおっしゃるのですね」

知る人「そうだ。そのために一番いいのは、一度痛い目に遭うことなのだが、まあ、それも酷な話だな。ここらで整理しておこう。インターネットに偽情報や無責任情報が多いのはだな、だいたい次のような理由が考えられる。

1)誰でも、いつでも、どこにいても、そしてどんな言語であっても、自由に書き込むことができる。

2)それをチェックする機能、出版物で言えば編集部のようなものがない。あっても、特定の個人や法人などの団体のサイトに限られる。

3)そのため、匿名による記述が許される。だから言いたい放題や言い逃げが横行する。

4)手書きとの最大の違いとして、訂正・変更・削除・書き足し・コピー&ペーストなどの改変が手軽に自由にできるため、盗作はもちろんのこと、完全な丸写しのごとき犯罪的で恥知らずな行為も簡単にできてしまう。

5)アフィリエイトなどの不労所得獲得手段が珍しくなくなっており、自身のブログ等に広告を貼ったり、巧みに販売サイトへ誘導するなどの手口が後を絶たない。金儲け目的だから、必ず何らかに対して購買意欲を煽る仕組みになっており、そのため、中立的意見や論考が目立たなくなっている。金儲けしか頭にない連中なら、当然の如く、上記4)のような手口を平然と使う。

・・・どうかな。これがネット情報の実態だ」

問う人「ひっかからないようにするには、自分が賢くなるしかなさそうですね」

知る人「そうだな。それから、偽情報をつかまされてひどい目に遭った体験をネット上に正直に公開して、自分と同じ失敗をする人を少しでも減らそうと行動するのも大切だろうね。世の中バカばかりに見えるかもしれぬが、心ある人物は必ずいるものだよ。そういった人々と連帯できるのも、インターネット時代の利点だからね。利便性には必ず表と裏がある。今までだってそうだっただろう。どんなに時代が変わろうとも、主役が私たち人間である限り、よくするのも、悪くするのも、その要諦は同じなのだ」

(了)

1836字。60分。

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