サプリメントで自己満足
【ダイエット中の我が妻が、痩せ効果の期待できるサプリメントを買ったのですが、半年使っても変化なしのため解約しました。ネット上は、よく見るとあちらこちらにサプリの広告が。いい商売なんですねえ】
知る人「いい加減なサプリメントに騙されたという苦情を聞いてほしいのかね」
問う人「いえ、そうじゃなくて、サプリの広告だらけのWEB業界に驚きまして、ご意見を伺えればと」
知る人「WEBだけではなかろう。新聞を見なさい、ゴマだのウコンだのノコギリヤシだのと、サプリメント広告が必ず混ざっている」
問う人「よほど儲かるんでしょうね」
知る人「どうだろうな。薬九層倍と昔から言われるが、サプリが医薬品ほどうまみのある商品なのかどうか、本腰入れて調べたわけではないから、詳しくは知らぬ。しかしまあ、ボロい商いなのだろうね。他人の健康不安に付け込むのだから」
問う人「潜在顧客がそうとう居そうですものね」
知る人「君の奥さんみたいな人は、それこそ掃いて捨てるほどいるだろうな。ダイエット関連などその典型だ。つい最近、葛の花から抽出された成分を使ったダイエットサプリのWEB広告をいくつか読んでみたのだが、実に面白かったよ。数社あってね、どれも消費者庁に許可された機能性表示食品なのだが、消費者庁に届け出たという試験データが、各社同じなんだな。前後の文脈は違っても、効果を示す段になると一字一句違わないのだよ。示されたグラフの形に至るまでね。冗談みたいな話だろう」
問う人「行政の目が行き届いていないのですね」
知る人「あれはトクホと違って、届け出ればもらえるという、お手軽な”お墨付き”だからな。実験データの出所が同じであっても気付かないか、わかっても大目に見ているのか、それはわからんがね。トクホにしたって、コーラにまでトクホを謳ったものが出回っている始末だ。スーパーの棚を見ていると、何の冠もついていない商品の方が少数派に見えてきてしまう。ビジネスマンさんたちの大好きな言葉で言えば、<付加価値>というやつなのだろうね。事実はマンガより奇なり、だ」
問う人「妻が二度とああいうのにひっかからないようにするには、どうすればいいでしょうね」
知る人「奥さんがどんな体型なのかは知らぬが、まあ、あせらずじっくり取り組むことだな。何年もかかって太ったのなら、やはり何年もかけて痩せるのがまっとうな筋道というものだよ。サプリメント販売の最大手・サントリーは、昔から広告のうまさで知られている。巧みに消費者を煽るのだな。ゴマのエキスから作られた<セサミン>の広告を見るがいい。有名無名の人間を借り出して、さもセサミンのおかげで健康維持ができているかのように宣伝しているだろう。彼らを儲けさせる余裕があるのなら、もっと社会的に有意義な用途に金を回してほしいものだな」
問う人「サプリメント・アドバイザーとかいう資格までありますよね。ビックリしましたよ」
知る人「玉石混交のサプリ市場の整備に、あれは一定の効力を発揮するかもしれぬ。だから胡散臭い資格とまでは言わぬが、メーカー、販売者、広告屋、医者、薬剤師など、サプリに関わる者が安定して利益を分け合える仕組みを保護したいのだろう。ああいうのにひっかからないようにするには、という君の質問への答えとしてはだな、市場主義の本質を知り、プロセス軽視の風潮に煽られぬ人格を養いなさいと言いたいね。わかるかな」
問う人「すぐに結果を求めるな、ということですか」
知る人「そう。結果だけを金で買わせるのが今の世の中なのだ。だからすぐ元通りとなり、白紙で再スタートする人間が無数に発生する。A分野に騙された客は次にB分野に飛びつき、それでまた白紙に戻るとC分野の商材に手を出す。いずれ、サプリ業者に骨までしゃぶられることになろう。二度も三度も味わえる、前夜のおでんの如く、しっかり味の沁みたカモネギ顧客というわけだ」
問う人「ダイエットだけではありませんよね、人の不安を巧みに商売のネタにしてしまう。賢くならなきゃダメですね」
知る人「健康を取り戻すのは楽ではないのだよ。ダイエットサプリにしても、販売サイトを隅々までよく読めば気付くはずだが、これを飲めば必ず痩せるなどとはどこにも書いておらぬ。それどころか、並行して有酸素運動を実行した方がよい、という具合に、自主的に体を動かすことを推奨している。騙されたとお怒りの向きに対して、いくらでも反論できる文面になっているのだ。サプリに大枚をはたくのがイヤならば、理想の体になるまでのプロセス自体を楽しめるように工夫することだな。夫婦二人三脚で、知恵を絞ってみなさい。いい体を得たくば、頭を使うのだ。巧みな宣伝広告を鵜呑みにしてはならぬ」
(了)
1937字。