英語の乱用。祖国滅亡への早道

【Go To Travel に続いて、Go To Eat ですか。ここはどこの国なのでしょう。私たちはどこの国の人なのでしょうか。為政者たちが、当たり前のように英語を乱用し、国民もそれを受け入れる。おぞましい光景ですね】

 

 

知る人「コロナのおかげで、カタカナ語が一気にその範図を拡大してしまった。他人との距離はソーシャルディスタンス、警告はアラート、在宅はステイホーム。これらに異を唱える者など誰もおらぬ。なぜだかわかるかね」

問う人「日本人は、そういうのに慣れてしまっているんでしょう」

知る人「それだけではない。君の質問にあるGo To にしてもだな、いずれも一刻の猶予もならぬ火急のときに用いられている。感染者の急増、観光客激減による未曽有の減収など、すぐに手を打たねば傷口がどんどん広がってゆく難題ばかりだ。このような場面において、『なぜカタカナ語ばかり使うのですか?日本語で言い表せないのですか?』などと問うてみよ、返ってくる言葉は決まっている。今はそんな些末な議論をしているときではない、とね。カタカナ語の乱用と、国家的危機とがひと揃えになって動いているのだよ。だから誰も口を挟めぬのだ」

問う人「なるほど。反対の声が聞こえてこない理由は、そこにあるわけですか」

知る人「いや、そうとも言えぬ。試しに Go To 関連の情報を検索してみるがよい。Go To Travel という英語表現が正しいのか、とか、和製英語ではないか、とか、中にはご親切にも、正しい英文法に従えばこうなる、と英語表記を訂正している記事もある。これらはどれも、正しい英語を使いましょう、であって、日本国の政策名に外国語が充てられることへの疑問や抵抗はどこにも見られぬ。言いっ放し、書きっ放しが常識の、無責任なWEBの世界で反対意見が散見されぬというのは、ほぼ誰も気にしていないという事実の現れであろうな。我が国、我が民族は、いよいよ地に堕ちたのだよ。思い出すのは、末期のオスマン=トルコ帝国だ。当時、トルコの宮中では、アラブ語が乱用されていた。為政者たちのトルコ語はアラブ語に侵食され、その比率は6割にも及んだという。アラブ語を混ぜて話すのが高級だとの誤認識が蔓延していたのだな。これは裏返せば、自国の言語を貶めており、自分たちはトルコ語に誇りを持っておりませぬ、と宣言しているのに等しい」

問う人「ううん、日本もいずれそうなりそうな気がしますね」

知る人「否。我が国はもっとひどいことになろう。当時のトルコの民衆は、そんな宮中をバカにし、嘲笑っていた。舞台演劇などでも、アラブ語に冒された宮中人を演じて観客を喜ばせたりしていたそうだから、少なくとも一般民衆段階では、トルコ人たる誇りを失っていなかったのだな。ひるがえって現代日本はどうだ。上から下まで頭が冒されている。末期的なのだ、今の私たちの国は」

問う人「もはや手の付けようがないところまで来ているのでしょうか」

知る人「そうかもしれぬな。少し話は違うがね、例の尖閣諸島問題を見てみよう。中国の狙いはだな、ひんぱんにその周辺に中国船が現れることに日本国民が慣れきってしまい、そこからなし崩し的に既成事実の積み上げを完成させる。そうなれば、日本人の中には、憤りよりも諦めの空気が支配的となり、中国はめでたく領土拡大に成功、とまあ、こんなシナリオだな。今論じている外来語乱用問題も、これとよく似ている。いや、ほとんどそっくりだと言ってよいかな。日本語という母語の領域が、じわじわと英語に侵食されているだろう。なんせ、戦後生まれの私たちは、義務教育期間ばかりでなく、学校と名の付く場所すべてで英語の教育を受けてきた。まあ、モノにはなっておらぬがね。英語漬けに慣らされた戦後日本人だから、英語に母語が冒されている現状に慣れるのも早い。日本語の中に英語が重要な位置を占めるのが当たり前と思ってしまうのであろう。末期のトルコ帝国以下だよ、これは。今の中国共産党政権は、清朝末期の時代を恥の百年と認識し、その払拭に努めている。我が国は今がまさにその 恥の時代 真っ只中と言ってよかろう。中国には孫文や毛沢東といった偉人が現れて祖国を救ったが、いわゆる茹でガエル現象が何十年も続くわが国で、あのような偉人の輩出は期待できぬ」

問う人「では、私たちは今何をすればいいのでしょうね」

知る人「まずは英雄を待望する貧しき心を完全に捨てよ。次に、やまとことばの歴史を一から学べ。さらにその次、注目すべきは明治維新と太平洋戦争の敗戦だ。これら二つにより、民族の誇り、守るべき文化や精神的支柱の多くが失われた。いわば、頽廃日本の原点である。ここに還るのだ。我らが失った、民族の礎とは何なのか。ここまで原点回帰しなければ、現代日本人の腐食し切った頭は治らぬ。一朝一夕で変えようとせず、根気よく、時間をかけるのだ。私たちすべてが、無意識のうちに売国奴と化しているのが現状なのだ。目を覚ますしかあるまい」

(了)

2052字。

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