自然体で生きるために必要なこと

【先ほどはご指導ありがとうございます。でも、まだ何か引っかかっていて、吹っ切れない、モヤモヤした何かが、私の邪魔をします。悪魔に完全勝利して前進するためには、まだ足りないものがあると思うのです。何かが】

 

 

知る人「さっき言い忘れたことがある。とかくこの世は雑音だらけ、雑念だらけだ。見なくてよいもの、聞かなくてよいことで世は充満していると言ってよい。こんな環境下でおのれを保つには、少々工夫が必要なのだな」

問う人「はい、そこのところをうかがいたくて、もう一度参りました。ご高説賜りたく、お願い申し上げます」

知る人「カタいな。しかもそのような訊き方は、 ”どう思ってるか、ひとつ教えてもらおうじゃないの” というふうに、相手を試す言い方にも聞こえるものだ。…はい、言い直しなさい」

問う人「では、ええと、どう思ってるか、ひとつ教えてもらおうじゃないの…で、どうですか」

知る人「それだけユニークな返しができるのなら、私のアドバイスなどいらぬと思うがな、まあよかろう。君のような生真面目な性格の人間は、一本調子の急流にはまってしまったとき、それにうまく流されつつ、少しずつ岸へ近づいてゆく、という対応ができぬ場合がある」

問う人「流されっぱなし、ということですか」

知る人「それならまだよい。悪いことに、産卵期の鮭の如く、急流に逆らい、それを遡ろうとしてしまうのだな。一番ダメなパターンだ。私たちを取り巻く現実というものは、個人の力ではどうしようもないくらい強烈である。この急流には逆らえぬのだ。しばらく身を任すしかない。そうしているうちに、情勢が変わるか、自分自身の心身の調子が上向き、流れとうまく付き合えるようになる。機が熟すのを待つ。これも大切なことなのだ。が、生真面目人種はときに待つことができぬ。待てる自分を誘い出す工夫がいるんだな。何だかわかるかね」

問う人「ううん、何だろう…」

知る人「実にたやすいことだ。趣味だよ。好きなことに興じるのだ。要は気分転換だな。一日二十四時間、ずっと緊張を保てる人間など、世界中探してもおらぬ。もちろん、世界中探し歩いたことはないがね。どんな仕事であれ、職業とは厳しいものであるし、日常生活でも、仕事とは別種の緊張を強いられるときがある。公私の別なく、日々を真剣に生きるというのは、かくも多くの困難を伴うのだ。だからこそ、直面している現実から一時避難させてくれる場所が、誰にも必要なのだな」

問う人「ええ、それはわかるのですが、どうも、何と言うか、現実逃避の手段みたいで、気が引けるんですね」

知る人「現実を放擲し、好きなことや楽しいことだけをして時間を浪費すること。これが現実逃避だ。健全なる気分転換と混同してはならぬぞ。よいか、それはかなり危険だ。最悪の場合、思い詰めて自ら命を絶つことにもなりかねぬ。当サイト運営者・どうまわり由紀夫氏は、1970年代の英米ロック&ポップスが大好きでね、時々聴きまくるのだそうだ。氏は老人介護の仕事で毎日かなり疲れているからね、そうやってガツン、と気分を変えることをやらなければ、とても心身がもたないのだよ。君にもそういうものが何かあるだろう」

問う人「ええ、自分は鉄道のローカル線に乗るのが大好きでして、つい最近、久しぶりに用事があって東京の足立区に行ったんですが、北綾瀬と綾瀬の間を往復する『0番線』がなくなっていてショックでした」

知る人「ああ、地下鉄に乗り入れているからね、最近は。そうか、ああいうのが好きなのか。では、JRの亀戸線とか、都電荒川線とか」

問う人「いやもう大好きですよ。一日中乗っていたいくらいで」

知る人「なるほど。ということは、君、最近はそういうのに乗っていないのだね」

問う人「そうなんですよ。忙しすぎて、ヒマがないんです」

知る人「そうだな、読書や音楽鑑賞なら、ちょっとした時間の隙間をみてできぬこともないが、ローカル線ではそうもいかぬなあ。休みは少ないのかね」

問う人「交代制で、月に8~9日ですから、趣味に興じるヒマがないほどではないんですが、ただ、残念なことに、連休がないんですね」

知る人「休みが飛んでいるのだな。それではなかなか落ち着いて電車の旅を楽しめぬであろうな。何とかして連休を取得する他あるまい。それもままならぬのかね」

問う人「繁忙期を避ければ何とかなると思います」

知る人「休息は何より大切だよ。もちろん、休んでから働くのではなく、働いてから休むのが常道だ。だが君にはそれができている。休む権利はじゅうぶんにあるのだ。堂々と連休を取るがよかろう。…ああ、ひとつ言っておくとだな、当サイト運営者・どうまわり由紀夫氏は、奥さんと二人で静岡の大井川鉄道に乗ってとても楽しかったそうだ。あれも君の好きそうな路線だな」

問う人「もう7~8回乗りましたので」

知る人「まあ、とにかく、有意義な休日を。鬼神の如く働くのはその後でもよいのだからね」

(了)

2021字。

 

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