コロナとの闘いから得たもの

【コロナウィルスと人類の闘い、まだ続きそうな勢いですね。多数の犠牲者を出した、ということにとどまらず、さまざまな教訓を投げかけられていて、まさに歴史的な時期に来ているという気がします。私たち、何を失ったのでしょうか】

 

知る人「人命や雇用など、誰にでもわかることは、およそ答えにはなるまいね」

問う人「いかにも。今おっしゃったのはどちらも尊いものではありますが、そのような、耳目になじんだ言葉ではなく、もっとこう、何と言いましょうか、その」

知る人「うん、そうだな。私の考えでは、失った、ではなく、すでに失われていた或いははじめからなかった、ということに気付かされた、という実感が強いのだがね」

問う人「それはどういう点についてですか」

知る人「いずれも日本についてなんだがね。大・中・小と分けて説明しよう。まずもっとも大きなところから。当サイトではたびたび論じたところだが、我が国では、徳川以来の愚民政策が、形を変えて続いている。コロナ問題と、それに続くオリンピック。これら一連の流れによって、わたしたちの意識の中に、いわゆる民主主義というものがまったく根付いていないことが証明された。何があろうとお上頼み。民意が無視されても泣き寝入り。まさしく権力者とその取り巻き連中のやりたい放題の国と言う他はない。欧米なら暴動が起きているだろう、などといった意見をWEBや新聞紙上で時々見かけるが、実際、こんなにもお上品でおとなしい国民性を有するとは、我ながら呆れてしまうね。次に中くらいの話。いや、これも<大>かな。まあいい、先に進もう。オリンピック開催直前になって、人事やら何やら、世界に恥をさらすような問題点が次々と明るみに出てきたし、新たに発生もしてきている。それと無関係なことであっても、とにかく、今の我が国を一言で表現するなら、 ”踏んだり蹴ったりの国” といったところであろうな。これらは単に運が悪いとか、論を尽くさず見切り発車したからだとか、為政者の力量だとかいう問題ではない。戦後日本のあり方が根底から問われているのだ」

問う人「戦後の経済偏重主義による欠陥、ですか」

知る人「その程度では済まぬ。国家の仕組みから私たち国民の日常に至るまで、すべてが、有事の前では無力であるとわかったのだ。今の政権与党のやっていることをよく見るがいい。米国の黒船たった一隻すら追い返せず、ただ右往左往し続けた挙句、不平等条約を押し付けられた末期の江戸幕府とどこが違うと言うのかね。おまけに、横暴の限りを尽くす中国共産党に向けて ”百周年おめでとうございます” ときた。公明党代表の山口など、ひとつの党が百年も続くなんて云々、と、御用聞き体質を自ら暴露しているのだから、与党として以前に、日本の政治家失格だ。現在の我が国のすべてが、平和で波風立たぬ昭和元禄を前提として成り立っていたのだな」

問う人「アメリカの核の傘の下で繁栄をむさぼっていた頃と、何ら変わらないってことですね」

知る人「米軍基地が日本に常設されることについて、かつて吉田茂はこう言い放ったものだ。

番犬を飼ってると思えばいいんだよ。

…実態はどうだ。私たち自身が飼い犬に成り下がってしまった。割腹して果てた三島由紀夫氏の憂いは正しかったのだ」

問う人「では、<小>についてはいかがですか」

知る人「知識人の<知>、有識者の<識>など、長年の学習の成果を発揮しなければならぬ賢者どもが、いずれも役立たずだとわかったことだ。彼らの多くは、体制の御用聞きか、機を見るに敏な目立ちたがり屋か、こういったバカと同一視されたくないがために黙秘を決め込む消極派だ。どのタイプも、有事には全く役に立たぬ。大昔にさかのぼれば、たぶん、古代ギリシャのソフィストとやらもこんな感じだったのかもしれぬな」

問う人「本物の<知>であるソクラテスが、それと闘おうとした」

知る人「だが、今の我が国にソクラテスはおらぬ。毒杯を仰ぐ様子を見ていた大衆と同レベルの者しかおらぬのだ。嘆かわしいことだよ」

問う人「そのような知識人の温床となっているのは、平和国家ならではの、議論のための議論を許してくれる多くのメディアですね」

知る人「いかにも。今は有事なのだ。昨年、米大統領だったトランプがこう言ったね。

まるで、戦時中の大統領みたいだ。

…このときトランプには、少なくとも ”有事” というじゅうぶんな認識はあったはずだ。我が国はどうか。何をするにもまずは党に戻って、話し合って、識者の意見も聞いて、それから、それから・・・どんな劇作家でも、こんなのは喜劇としても書く気せぬであろうな、馬鹿馬鹿しくて」

問う人「ううん、お話を伺っているうちに、だんだん気分が沈んでいくようです。いったい、日本はどうすればいいのでしょうか」

知る人「壊すのだよ。一度、戦後日本を解体するのだ。流血の騒動に発展するかもしれぬが、それはもとより覚悟の上だ」

問う人「暴動を起こせと。違いますよね」

知る人「結果として、或いは必然的な過程として、そこを通過しなければならぬのであれば、それもやむを得ぬであろうな。だが、その前にやるべきことがある。本物の賢者が、エセ賢者を凌駕することだ」

問う人「どういうことでしょうか、それは」

知る人「私の言う本物の賢者とは、日々真剣に働く生活者一人一人のことだ。彼らは無名の思想家であり哲学者であり、そして何よりも実践家だ。彼らが立てば、お上品国民の汚名を返上できるであろう」

(続く)

2279字

 

 

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