ブルーインパルスって何ですか
【五輪祝賀ムードを盛り上げた自衛隊機<ブルーインパルス>について、ひとこと言いたいのです。あれは日本の戦闘機でしょう。なぜ英語名なのですか。旧日本軍に合わせろとはいいませんが、せめて母語を使ってほしいものです】
知る人「カタカナ語の乱用は、言うまでもなく今に始まったことではない。私たちの西洋信仰の歴史は古いのだ。かつて豊臣秀吉は、城中でポルトガル人の服装を身に着け、家臣にも同じ格好を強要したとも聞く。もうじき渋沢栄一にとってかわられる一万円札の顔・福沢諭吉は、若い頃、横浜に行って愕然とした。町に並ぶ商家などの看板がすべて英語なのだな。彼が青春を賭けて習得したオランダ語など、どこにもない。英語の時代が来ていたと痛感した・・・」
問う人「でも、福沢はそこで頭の中を完全に切り替えるのですよね」
知る人「そう。そこが幕末史に消えた凡百と大福沢との違いだな。東京に帰って、猛然と英語を学び始める。そうして、我らもよく知る偉人への道を驀進してゆくわけだがね。だが、福沢は英語に感化されっぱなしだったのではない。美しく正しい母語の使用を訴えた人でもあった。彼以外にも、日本語が外国語に浸食されてゆくことに危機感を抱いた人物たちは少なくない。そんな先達がだな、このたびめでたく我が国の空を舞った自衛隊機の名前を耳にすれば、どんな反応を示すかね。呼び出して聞いてみたいものだ」
問う人「また恐山のいたこですか」
知る人「まあ、それは今回の文脈ではやめておこう。ブルーインパルスというのは、いわゆる展示飛行の役割を担う航空機であって、戦闘機ではない。だからいいじゃないか、と思われるかもしれぬが、さにあらずだ。彼らの初代は、1960年の<空中機動研究班>で、浜松基地にあったそうだ。二代目は1982年、松島基地の<戦技研究班>。アメリカから供与されたF-86戦闘機が最初だったとのことだ(以上、出典『コトバンク』)。今のは三代目だが、初代・二代の名称からわかるように、純然たるお祝い飛行隊として誕生したのではない。我が国土防衛の、文字通り一翼を担う役割があったのだな。現在の名称がいつから使用されているのか、調べていないからわからぬが、いくら米国からの供与機とはいえ、英語名をつけることはなかろう」
問う人「今まで、このことに疑念を抱いた人はいなかったのでしょうかねえ」
知る人「いただろうな。1960年といえば、国士的な気分の人々が、今よりもずっと多かっただろうしね。だが、かき消されたのであろう。考えてもみよ。いくら日米安保に基づいてるとはいえ、米国はかつて、二発の原子爆弾と無数の焼夷弾で我が国土を蹂躙し、莫大な数の命を奪った敵国だ。その国から戦闘機を供与されるだけでも我慢ならぬというのに、名称まで相手に合わせるとはね。今や戦後80年が迫っている。敗戦と同時に誕生した人が80歳になる。鬼畜米英などという妄言は死語になってよいが、米国盲従の姿勢は、もうそろそろあらためねばなるまい。事は国防を預かる自衛隊の問題なのだ。たかが名前ぐらいでおおげさな、と感じた者は、自らを戦後教育の犠牲者と認識せよ」
問う人「自衛官募集広告でも、堂々と英語使ってますよね」
知る人「英語慣れした若者を集めるには、その方が効果的と判断したのであろう。祖国を信じ、異国の土となった方々が現状を知れば何と言うか。嘆かわしいことだ」
問う人「でも、嘆いてばかりもいられません。今、私たちは何をするべきでしょうか」
知る人「英語の乱用は、言葉だけの問題ではない。祖国滅亡への道につながっているという認識を、多くの日本人が持たねばならぬ。それには、教育しかない。私塾の乱立した幕末のようになるのも一方法であろうな」
問う人「決め手はないってことですよね」
知る人「当たり前だ。一億の民の運命がかかっているのだぞ。単純な方程式にあたはまるなどと考えていたら大間違いだ。自分にもできる、と思ったことを、まずはできる範囲で始めるしかあるまい。当サイトでたびたび言っているように、とにかく行動せよ。人が動かぬことには、何も始まらぬ」
(了)
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…英語乱用の問題については、以下の記事でも論じています。よかったらご参照ください。