声に出したくない日本語(1)

【日本語の乱れが叫ばれて久しい昨今ですが、NHKのアナウンサーでさえ誤用してしまうほどの低レベル化がすすんでおり、基準をどこに求めたらいいのかもわからなくなってきていますね。嘆かわしいことです】

 

 

知る人「個々の単語の誤用・勘違い、文法の乱れ、語源や音の響きなど一切無視した極端な記号化等々、今やわたしたちの母語は、最低限の意味すら伝えられなくなりつつある」

問う人「末期症状ですね」

知る人「いかにも。民族が誇りを失うとどうなるか、実にわかりやすい見本を全世界に向けて示し続けていると言ってよかろう」

問う人「昨年の東京五輪などで、選手たちがよく口にしていた言葉のひとつに、『日本を元気に』というのがありました。僕はこれが気になってしかたないんですが。まあ、誤用とか、文法的誤りではないけど」

知る人「とんでもない勘違い、とでも言えばよかろうかな。某テレビ局の国際的恥さらし番組<24時間テレビ>に出てくる、見栄えだけで中身のないタレントたちも、それをよく口にしたがるね」

問う人「どういう勘違いなんでしょうね」

知る人「一言で表現するならば、日本を舐めている、といったところかな。一競技者の活躍程度で国民の士気が変動するほど、わが国は小さくないのだ。自分が注目されている、と思って舞い上がってしまったのか、それとも、ただ言ってみただけなのか、真意のほどはわからぬが、とにかく、そう言って恥ずかしくならないのだから、たいしたものだな」

問う人「はやり言葉の類いでしょうか」

知る人「いや、定番表現として定着するであろうな。視聴率しか考えていないテレビ局の連中が、そう言わせることもあるだろう。1億2000万の国民がひとくくりにまとめられてしまうのだから、ずいぶん乱暴で無神経な表現と言うしかない。いつだったか、日本でサッカーのワールドカップが開催されたときなど、全国民がそれに熱狂して当然、といった論調が支配的であった。なんでも迷わず右へならえのわが国民性を見事にあらわしていたものだ」

問う人「みんないっしょにしてしまわないと、落ち着かないのでしょうか、わたしたちは」

知る人「不安になるのだろうな。そして、他の多くが自分と同じ感覚を持っていることを確かめて安心するのだよ。今も続く新型コロナウィルスへの対応を見ればわかるだろう。それともうひとつ、日本というものが、日本人ひとりひとりの中で、軽く薄っぺらな存在に成り下がった、という原因も見逃せないね。まあこんなもんだろう、とか、所詮この程度だから、といった見くびりが支配的になっている。しかしその一方で、しっかりと国家に依存しており、その枠組みを変えようなどと大それたことを考える者はおらぬ。いわゆるゆでガエル現象が招いた、民族退行現象のひとつと言えばいいかな。まあ、わたしたちの劣化はかなり前から始まっているのだ。個々の現象に驚くことなく、大きな流れを見失わないようにすることが肝要だな」

(続く)

1220字

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です