はあ、またクリスマスですか・・・

【12月に入る前から、街はクリスマス色が濃くなりますね。今ごろとなれば、もう、どこもかしこもそれ一色と言っていいほどです。日本の年の瀬には、これしかないのでしょうか。毎年毎年、暮れが近くなると気持ちが沈みます】

 

 

知る人「君自身は、クリスマスを楽しもうとはしないのだね」

問う人「まったくしません。本来あれは、キリスト教徒のものでしょう。教会が主導するならわかりますが、実際には商売道具みたいなものですよね」

知る人「そうだな。なんせ、 クリスマス商戦 などという言葉まであるぐらいだからな。官庁の統計を見るまでもなく、12月という時期は、一年でもっとも金が動く。すべての営利法人や個人商人たちが、消費者の財布の中身を奪い合う熾烈なる期間と言える。当サイトではもう何度も論じておるが、私たち日本人は、単に日本列島に居住する消費者人種に堕してしまった。やまと民族ではなく、日本列島に金をばらまく習性を有する消費動物だ。そんな人々にとって、12月は実に居心地のいい時期なのであろうな」

問う人「僕は居心地悪いです」

知る人「右に同じだ。私も一時は、歳時記を活用した商習慣といったものを考案しようと努力した。だが、うまくいかなかった。あれは句を詠むために必要な知識であって、日常生活にぴったりと沿ったものではない。ましてや、商いとなれば、客の購買意識を刺激しなければならぬ」

問う人「なるほど。日本的なものを活かそうとして、失敗なさったのですね」

知る人「そう。消費者の購買行動の原動力として、とくに大きなものは<横並び意識>だ。個性重視だ何だと言いながら、その実、いつも周囲の目を気にしている。誰かが買った、じゃあ自分も、とね。もちろん、すべてがこう単純ではないが、まわりに煽られるというのは、経済が動く重要な要素なのだな」

問う人「つまり、人を煽り立てるのがうまくいかなかった、と」

知る人「うまくいかなかったというより、そんなことは馬鹿馬鹿しくてやる気にもならなかったな。商品やサービスについての説明は必要だよ。だが、世にはそれとわかりそうな広告の類が氾濫しているではないか。およそ見たことも聞いたこともない商品・サービスなど、ほとんど存在せぬ。買いたきゃ買うだろ。その程度にしか私は思わなかったからね、このような認識では、商売など不可能だ」

問う人「そうですね、商人の考え方じゃないですよね、それは」

知る人「日本のルソーと呼ばれている中江兆民は、一時期、会社を興して実業に手を染めようとして失敗した。彼には、貪欲に需要を喚起して顧客を獲得する姿勢が著しく欠けていたのだな。それはそうだろう、根が学者肌の人物なのだからな。・・・ああ、話が全然違う方に向いているね」

問う人「はあ、クリスマスについて論じていただくつもりでした」

知る人「12月の行事などと言葉を入力して検索すれば、ほぼすべて、クリスマスと正月準備に関するものが出てくる。他にもないわけではないが、とってつけたような○○記念日だの○○の日だの○○週間だのといった、現代日本人が適当に作った人工的行事がほとんどだ」

問う人「そうなんですよね。クリスマスというのが、あって当然というか、日本の12月に完全に居場所を確保してますよね」

知る人「まあ、あって悪いものではないと思うがね。サンタクロースなど、子供たちの夢をはぐくむのにはうってつけの素材だろう。世界中でやってもおかしくはないと私は思っておる。だが、それしかないという今の状態が問題なのだな」

問う人「いつごろからこうなったのでしょうね」

知る人「私も詳しくは知らぬが、確か、救世軍が日本に上陸してからではなかったかな。英国のウィリアム・ブースの取り組みに共鳴した山室軍平が、日本に持ち込んだのだと記憶しておる」

問う人「ということはですね、最初は商業的ではなかったのでしょうか」

知る人「山室は社会事業家だからな。市場を形成する意図をもって導入したのではなかろう。だが、私たち日本人の舶来信仰とピタリ一致したのだろうな。瞬く間に、というと大げさであろうが、かなりの速さで商戦化していったのであろうな」

問う人「クリスマス以外にも、ハロウィンとかイースターとか、意味も分からず形だけ取り込んだものがいくつもありますね」

知る人「上澄みだけ吸い取るのは、いわば私たちの近現代史そのものだと言っていいぐらいだからな。富国強兵の時代は確かにそれが急務であったのだが、21世紀の今も、そんな姿勢だけが受け継がれている。まあ、島国根性を叩きなおさぬ限り、この傾向はずっと続くだろうね」

問う人「クリスマス以外に何かやるとしたら、何がいいでしょうね」

知る人「難しい質問だな」

問う人「そうですよね、失敗したんだから」

知る人「私は挑戦したのだ」

問う人「でも、失敗は失敗でしょ」

知る人「・・・」

問う人「失礼しました。先へどうぞ」

知る人「そうだな、クリスマスのような、全国一斉にできる取り組みとなれば、何度も試行錯誤を繰り返さねば、なかなか見つからぬであろうな。だが、地域単位ではどうだ。地元の歴史をひもといたり、地域振興に貢献した人物に因んだり、その他、いろんな企画が考えられよう。寒い時期だからね、我が家のお鍋自慢を競う大会なんかも面白いのではないかな」

問う人「あ、いいですね、それ」

知る人「まあな。ただ、これを商業的に成功させるとなれば、また別の能力が必要だ」

問う人「無理はやめましょうよ」

知る人「言われるまでもない」

問う人「そうやって考えていけば、けっこういろんなことが可能ですよね」

知る人「そうだな。とにかく頭を使うことだ。大型商戦におんぶにだっこで、あとは消費者頼み。これではいい街づくりもできまい。クリスマスだけではだめだ、という強い意識を持った人物が多く出てこなければ、現状は変わらぬであろう。実績主義もいいが、やはり、新しいことに挑戦する気概を持つことも必要だね。それがひいては、日本の一年を日本人らしく彩る方向につながってゆく。安易な大衆迎合はいい加減やめて、革新の気概を持ってほしいものだ」

(了)

2491字

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