総理大臣とは、何者か(2)

【1月15日の記事 総理大臣とは、何者か(1) の続編です。AI作品が芥川賞を受賞したことへの抗議文を優先したため、少々遅くなってしまいました。と言い訳しても、誰にも気付かれはしないでしょうが…では、第二弾をどうぞ】

 

 

知る人「AI作品の件は、当サイト運営者・U氏の人生観にまでかかわる重大事件だからな、割り込んで一筆入れさせていただいた。今回はその前の記事の続きである」

問う人「総理大臣をはじめとして、為政者たちにはどうも危機感が欠如しているように見えます。この理由を、前回の問答では、内閣がサラリーマン化してしまったことに求めていたようですね」

知る人「言ってしまえばそうなろうがね、ことは一国の運営という重大事だ、もっと深く考えてみたい。確かに、与党側の組織が疲弊し、まともに機能しなくなっているという事実はあろう。やることが見るからに遅いし、ちぐはぐだ。企業の不祥事の際に見られる定番風物詩的光景=横一列に並んで数秒間頭を下げる、あれだな。あれと同様の空気を与党にも感じるのだな。つまり、やったのは自分ではないが、たまたま運悪くこの椅子に座っているから、しばらく殊勝な態度を示しておこう、といった責任逃れの姿勢だ」

問う人「まさにサラリーマン化をはっきりあらわしていますよね、あれは」

知る人「そう。ここには危機管理意識の欠如という問題がある。このたびのコロナ禍により、わが国に有事体制がまったくなかったことが判明したね。平和を前提としてすべてが築かれ、進められていた。元旦に起きた大惨事もまったく同じである。為政者たちも、ああ新年だ、お屠蘇でも口にしてのんびり過ごそうか、などと思っているところで災害に襲われた。お屠蘇気分のまま仕事をするから、何をやっても遅いし的外れなのだな。だがね、ここにはもう一つ、根本的な、さらに深刻な病巣があるのだ。君、 末は博士か大臣か という言葉を知っているだろう」

問う人「まあ、最近は誰も使わなくなった気がしますけど、昔はよく聞きましたよね」

知る人「なぜ誰も使わなくなったかわかるかね」

問う人「そういう人材がいないからでしょう」

知る人「違う。いつの世にも優秀な人物はいるものだ。ただ、現代においては、彼らが目指すものが異なるのだな。博士にも大臣にもなれそうな秀才が、他の道を選んでしまうのだ。あるいは、大谷翔平選手の如く、海外で腕試しするのだな。イチロー氏を見よ、いまや、シアトルマリナーズの重役ではないか。超一流の人材が他国に流出し、そのまま戻って来ないのだね。国内にあっても、政治家にも学者にもならず、例えば起業する、例えば動画サイトで活躍する、といった具合に、才能を他の分野に使ってゆく。この人が入閣すれば、政界の空気は変わるのではないか・・・そう思わせるような人物がいろんな分野にいるがね、彼らは決してそうはせぬ。一度きりの人生だからな、お飾り大臣や御用学者になるなど馬鹿馬鹿しいのであろう」

問う人「まあ、優秀な人ほど、自分を活かすことにかけては敏感ですものね」

知る人「そうなのだな。ここまでの話をまとめると、ろくでもない輩が総理の椅子に座ってしまう主な要因として、

1)与党内の空気が緩み切っており、誰がそこに座ってもそうなる。あいかわらず党内人事の微調整に支配され、彼らはまともに動けない。

2)入閣できそうなほど優秀な人物たちが、こぞって他の道を選択する。だから、二世議員に代表される如く、無能なお飾りしかあらわれてこない。

・・・といったところだな」

問う人「国民のことを心から思う人物がいない、というのは、当たり前かな、という気がします。彼らは自分たちが選ばれた逸材と信じてるでしょう。だからぼくら民衆をみくだすのはわかるんですよ。でも、ようやく最高権力者の地位にまで昇りつめたんだから、よおし、あれやるぞ、これもやるぞ、っていうふうにですね、野望というか野心というか、そういったのを今こそ実現するんだ、という熱い思いを持たないんでしょうか。ここが不思議なところなんですよね」

知る人「おそらく、その地位についた時点で野望達成なのだろうな。あとはそつなくこなして、引退して高額の年金をもらって悠々自適に暮らす。いずれどこかの出版社から、首相時代の回顧録でも書きませんか、と甘いお誘いがくるであろう。まあ、こんな具合にだな、わが身の行く末しか考えておらぬのであろうな」

問う人「人材としてはよくないですが、米国に目を転じてみるとですね、トランプ氏が次期大統領の最右翼ですよね。ああいった野心家は、わが日本には出ないのでしょうか」

知る人「トランプ氏はただの不動産屋だからな、あんなのが上に座るぐらいなら、まだ岸田総理の方がましだろうな。ただ、大望を抱く人物、という点だけで言えば、野党内にだって適任者はいるはずなのだ。だが、内閣は組織だ。突出した人物が頂点に立ったとしても、誰からも協力してもらえず潰れてゆくであろう」

問う人「野心家すら活躍できない国ってことでしょうか」

知る人「そういう人材は、外に出てゆく」

問う人「日本に残るのは、カスばかりでしょうか」

知る人「そんなことはない。優秀な人材はそこらじゅうにいるよ。ただ、今回の主題である総理大臣について言えばだな、適任者ほど他の道を選ぶ。だから、ただその椅子に座りたい、ただそうしたいという愚劣な無能者しか残らぬのだ。末は博士か大臣か の言葉に従ってもう一度考えてみよう。大臣になれそうもない凡百がその椅子に座る。ノーベル賞が欲しくてたまらぬ俗物学者が米国に渡って莫大な研究費をあてがわれ、野望に向かって進んでゆく。このような醜態をさらしたくないと考える、真の秀才たちは、博士にも大臣にもならず、別の道をゆく。かくして我が国の要所要所には、不適任者ばかりが居座るという珍事が常態化する。今の日本はまさしくそうなのだ、政財官界すべてにおいてね。嘆いていても現状は変わらぬのだが、あまりの惨状に打ちひしがれてしまう方々は多かろうね」

問う人「どうすればいいのでしょうか」

知る人「当サイトでは再三述べていることだが、既成の枠組み、つまり<国家>だな、これをいったん破壊するのだ。もはやこれ以外に日本再生の道はあるまい」

(了)

2561字

 

・・・ 総理大臣とは、何者か(3) に続ける予定でしたが、おもしろくないので、(2)で打ち切りと致します。

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